ちんポ

ちんこくんのポッドキャスト略してちんポ

formula / 石原洋

このアルバムは2020年2月にリリースされたアルバムでここ数年で聴いたアルバムの中で一番好きなアルバムだと断言できるぐらい好きなアルバムだ。まず石原洋さんという方の説明から。ゆらゆら帝国やOGRE YOU ASHOLEなどなどのサウンドプロデューサーをやってる人で石原さん自身の活動としては過去にWhite heaven The Starsで活動してました。White heavenは90年代、The Starsは00年代に主に活動していたみたいです。今作はなんとソロアルバムとしては23年ぶりのアルバムになる。

内容としては20分ぐらいの曲が2トラック収録されている。2トラックだがプログレ的な長い曲が2曲入っているのではなく1トラックに4曲ぐらいが入っている。ではその計8曲を楽しむのかというとそれもちょっと違う。いやそういう聴き方でも全然良いのだけどなにせ曲が聴きづらい。なぜなら曲と同時に街の喧騒や雑踏が環境音として流れているからだ。街の人の話し声、食事の音、駅の音、交差点の音等いろいろな街の音が曲の背後ではなくなんと前面に流れている。むしろ背後に流れているのは曲の方で曲が喧騒からぼんやり現れてはふわっと消えていく。そのミックス具合がまさに絶妙で前面で雑踏や喧騒が流れることで背後にある音楽を俯瞰的に聴けるようになっている。本来は音楽と自分という関係において、例えば歌詞やメロディやギターの響き方など音楽の中身を楽しむのが普通である。その音楽が街で流れていたり街中でイヤホンで音楽を聴いたときに初めて音楽は街のBGMと化す。自分と音楽という関係ではなく街と音楽という関係を第三者として俯瞰的に聴くことができる。そのとき音楽の緻密さは薄れてしまう代わりに音楽にある印象や雰囲気がなめらかに現れ喧騒に溶けこんむことができている。この街のBGMと化した状態のまま提供されているのがこのアルバムだと思う。また、このアルバムを街中で聴くとイヤホンから流れている雑踏が本物の雑踏のように錯覚し街に音楽が漂ってるような感覚になり体験としても面白かった。

石原さんは今作のテーマを「遠さ」だと語っている。質の悪いブートレグのライブ盤なんかだと観客の声などのガヤガヤした音の遠くでライブの音が鳴っているみたいなものがよくある。"そういう感じ"がなんか良いなと思っていてそれが今作を作るきっかけになったそう。聴いてみて石原さんが仰るその"そういう感じ"というものがよく分かった。ブートレグの音源と石原さんは仰っていたが僕ら世代だとスマホかなんかでライブを録音したものをYouTubeやニコニコに違法にアップロードされたものなどが馴染みあると思う。ああいう音の悪い音源を聴くあの感じ、あの感じが「遠さ」として確かにあるなとすごく感じた。本来それは心地良くないはずのものなのだがそれの楽しみ方や新しい音楽の聴き方みたいなものを提示してもらった気がした。

そして今作を聴いてもう一つ感じたのはこの街や生活の雑踏はもう今ではただの雑踏には聴こえないということだ。特にコロナ禍で家に閉じ込められて街がゴーストタウンになっている時、この雑踏を聴くだけで心に来るものがあった。僕らが戻りたくて仕方ないコロナ以前の街や生活の空気感がこのアルバムに閉じ込められていてそれを憂い羨む僕らの怨念のようなものがメロウな音楽に化けて街に彷徨ってるようなそんな感覚を僕は感じた。

冒頭でも書いたのだがこのアルバムは2020年の2月にリリースされている。つまりまだコロナが蔓延する前のリリースなんですね。なんならこのアルバムの構想はそのさらに2年前からあったそうで。ほんとただの偶然ではあるが図らずともこんな現在の状況にマッチする音楽になっていた。

この感覚の体験ができるのはある意味コロナ禍に生きる僕らの特権だと思います。LPは現在中古でしかありませんがCDは通販などで普通に買えますしBandcampでダウンロードもできます。僕がここ最近の1番推してる音楽です。是非是非聴いてみてください。

あと最後におまけというかただの自慢なんですがこのアルバム好きすぎてCD1枚とLP2枚持ってます✌️

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YouTube https://youtu.be/S_1clAJieUc

bandcamp https://youishihara.bandcamp.com/album/formula-deluxe-edition